前書き
東アジアの食文化は、サミュエル・P・ハンティントン氏が著した
「中華文明圏」として定義され、その範囲は、清王朝の影響圏に一致します。
食文化において、日本は独自の文化を築いたと定義されますが、
その要は五大調味料の砂糖・塩・酢・醤油・味噌のうち、
醤油と味噌の甘味・旨味を出すのに欠かせない麹、
学名ニホンコウジカビ(A.オリゼー/A.ソーエ)にあると言えます。
ニホンコウジカビは繊細な性質を持ち、汎用性よりも、麹作りにおける、
ニホンコウジカビ以外の雑菌の侵入を防ぐ環境作りが重要となります。
殊に清酒造りにおいては、火落ち菌という腐敗性乳酸菌により、
蔵全体をダメにしてしまうリスクもあり、片時も注意を怠れない、
繊細な注意力と精神力と体力、全てが要求される仕事でした。
昔の日本人は、あえてストイックな道を選び、
現代の価値観とも相容れないものだとも感じます。
これは、資源に乏しく、知恵で補わなければいけない環境で、
いかに清酒に手間を掛け、付加価値を付けるという、
職人気質と言われる日本人の基質さえも培った由縁があるのではないでしょうか。
日本酒は、中世後期に成立した民芸と言えるのではないでしょうか。
中国の鉄器時代
「酒池肉林」で知られる紂王は殷王朝最後の王で、紀元前1100年頃とされ、
中国青銅器文明の盛期に当たります。
中国の場合、青銅器文明の盛期が長く続き、その後の鉄器普及が際立って速く、
鉄器文化が「統一国家」(秦)の出現と直結したそうです。(ChatGPT調べ)
殷王朝滅亡から始皇帝の誕生まで、1000年足らずの間に起こり、
万里の長城や兵馬俑など、優れた遺産を現代に留めている事から、
古代としては、かなり早い技術革新がもたらされた事が分かります。
鉄加工の難しさと資源の制約
鉄の融点は1538℃で、銅の1085℃より高いです。
古代~中世の炉では最高でも1300℃が限度とされ、
還元という反応を用いて鉄を取り出し、鍛えていました。
鉄器革命が始まる前は、鉄は脆く使い物にならないものでしたが、
高温で鍛えて不純物を取り除く事により強度を上げました。
膨大な鉄鉱石資源を有する中国では、
当時の流行スピードとしては急速に鉄器の普及が進んだと考えられます。
鉄器革命は、それまでの金属の概念を「溶かすもの」から「鍛えるもの」に激変させ、
優雅な工芸から無骨な道具へと変貌させたと言えます。
大陸側では食器や調理器具に金属を使いますが、日本では鉄は貴重だった為、
替わりに陶器が発達しました。
陶器は科学的に非常に安定で、腐食が起こらず、割れやすい事に気を付ければ、
匠の作った茶碗などは数千万円以上の値打ちになる事があります。
陶器は貴重なだけでなく、熱伝導率の低さから、熱しにくく、
冷めにくいという性質を持ち、刺身料理の見栄え、劣化の防止にも役立ちました。
米品種の違い
中国でも米は主食でしたが、炒飯などの加熱調理や加工を前提とした
インディカ米が多く、日本のように、
蒸米を主食として食べる文化が主流ではありませんでした。
現代の清酒は、短粒型のジャポニカ米が、更に品種選抜された山田錦などを用い、
「心白」と呼ばれるデンプン質純度の高い所を用います。
元々は同じ種類で、同じデンプンからなるインディカ米から、
清酒を作る事も出来るものの、味は日本酒と異なるものになるそうです。
麹の種類の違い、まとめ
伝統的なマッコリ(朝鮮半島のどぶろく)の麹は、日本のバラ麹とは異なり、
ヌルクという餅麹を用いていました。
動画本編では大陸側の麹はR.オリゼー(クモノスカビ属)を紹介しましたが、
ヌルクは様々な微生物が共生しており、
クモノスカビ属はその一つに過ぎないと言えます。
マッコリは乳酸菌による分解が加わる為、日本酒より酸味が強くなります。
マッコリは日本酒のような「緻密な研磨」や「雑菌との厳格な棲み分け」を行わない、
発酵微生物も流動的な「もう一つの純粋性」と呼べるでしょう。

Google Gemini
唐辛子の抗菌作用により、キムチの白菜は長持ちする。
調理用キムチは乳酸発酵が進む為、本格派の韓国料理は酸味が強く、
麹由来の甘味が感じられない事から、初見では好みが分かれるかも。
日本で製麹の主役としてA.オリゼーのみが残ったのは、
米品種と生産・保存における効率、環境への適応、清酒への加工においては、
単なるアルコールではなく味覚の嗜好が上手く競争を促し、
それらが相互に作用した結果だと思われ、一つの理由に達するには複雑であるというのが
今回の所感です。
動画本編
動画素材出典:特に但し書きがなければ全編
キャラクター
イラスト
SITE : COCOON
MASTER : 八色いんこ 様
キャラクター・ヴォイス
音声:VOICEVOX
Characters:
・春日部つむぎ
・中国うさぎ
・四国めたん
・玄野武宏
・白上虎太郎
・ずんだもん
テロップ等
テロップ、台詞枠:テロップ.サイト
黒板:OKIMONO
地図
地図:Google Earth(Image © Google, Maxar Technologies, 2025)
画像および写真
背景レイヤー(広島県東広島市/東広島市西条町の酒蔵通り):photoAC(自然 様)
画像生成:ChatGPT(OpenAI / DALL·E)
画像生成:Google Gemini
イラスト(枠なし):いらすとや
音楽/サウンド
音楽 : 甘茶の音楽工房
サウンド : 効果音ラボ
単発(登場順):後編
中華人民共和国:illustAC(ねむき 様)
かまくら:photoAC(mikan87 様)
使用ソフト
ソフト:饅頭遣いのおもちゃ箱
参考書籍等
参考書籍:日本の伝統 発酵の科学(講談社) / 著者:中島 春紫 氏
