iTi(アイティアイ)と申します。
僕の記事では、僕が仕入れた物語に関する知識等を、僕の主観でお話していこうと思います。
今回は物語を交えて『弁証法』のお話をしていきます。
弁証法とは?
弁証法とは哲学の用語です。解釈の多い用語ですが、今日では『ヘーゲルの弁証法』が有名ですので、この記事でもこれに則ります。
弁証法をかんたんに表しますと、『相反する主張の良いとこ取りをし、より良い結論を生み出す手法』と言えます。
主張はそれぞれ『テーゼ』『アンチテーゼ』。
良いとこ取りをすることを『アウフヘーベン』。
結論は『ジンテーゼ』と呼びます。
これではきっと、よくわかりませんね。
なので、新美南吉の児童文学『手袋を買いに』に登場する母さん狐に焦点を当てて、かんたんに解説していきます。
未読の方は、ぜひ青空文庫で一読ください。
母さん狐の物語
- 子狐が霜焼にならないように、手袋を買ってあげたい母さん狐(テーゼ)
- 町の灯を見て人間への恐怖を思い出し、足が止まる母さん狐(アンチテーゼ)
- 子狐の手を可愛い人間の子供の手に変えて、人間の街へお使いにいかせることにする(アウフヘーベン)
- 無事に帰ってきた子狐の話を聞いて、人間への考えを改める母さん狐(ジンテーゼ)
『手袋を買いに』の物語を、母さん狐に焦点を当てて、弁証法に当てはめたリストを作るとこのようになります。
上から順に解説していきましょう。
きっかけとなるテーゼ
- 子狐が霜焼にならないように、手袋を買ってあげたい母さん狐

第一のプロセスとなる『テーゼ』です。物語ではよくテーマとも呼びます。
これだけならば、母さん狐が子狐に手袋を買い与えればいいだけです。しかし物語ではそうはいきません。
対立するアンチテーゼ
- 町の灯を見て人間への恐怖を思い出し、足が止まる母さん狐

第二のプロセスとなる『アンチテーゼ』です。登場人物の障害となる部分です。
この障害のせいで、母さん狐は町まで手袋を買いにいけません。母さん狐は手袋をあきらめて引き返すか、恐怖を乗り越えて町にいく必要があります。
しかし母さん狐は、そのどちらでもない、あるいは、どちらでもある選択肢を取ります。つまり、良いとこ取り(アウフヘーベン)です。
アウフヘーベンから誕生したジンテーゼ
- 子狐の手を可愛い人間の子供の手に変えて、人間の街へお使いにいかせることにする

これならば比較的安全に手袋を買いにいくことができ、まだなにも知らない子狐に人間のことを教えられ、母さん狐は人間の恐怖に傷つかずに済みます。
そして母さん狐は、帰ってきた子狐の話を聞き、人間への認識を改める機会を得ました。
この結論が『ジンテーゼ』です。
- 無事に帰ってきた子狐の話を聞いて、人間への考えを改める母さん狐

おわりに
以上が物語を交えた『弁証法』のかんたんな解説となります。
弁証法は哲学の分野で使われる言葉ですが、物語の登場人物の思考プロセスを理解する上で役立つことが多いです。
とくにハリウッド映画では三つのプロセスから成る脚本、『三幕構成』を取り入れていることが多く、それぞれのプロセスごとに主人公が変化していく様は、弁証法の三つの流れに当てはめて考えやすいです。
次回は『三幕構成』について、かんたんに解説していきたいと思います。