一の三『マトリックス』with『自分で作る物語の図』~自分の考えをさらすのはとてもしんどいけど、読者の一助になればいいな~

 iTi(アイティアイ)と申します。
 僕の記事では、僕が仕入れた物語に関する知識等を、僕の主観でお話していこうと思います。
 今回は『自分なりに物語の図を作り、視覚化する』お話をしていきます。

『三幕構成』と『弁証法』を材料に作成

 図を考える上での材料ですが、僕は『三幕構成』と『弁証法』を組み合わせてストーリーを考えるのが割と好きです。
『三幕構成』と『弁証法』はどちらも三つのプロセスで変化を描きます。
 今回は実際に、この二つを組み合わせた図を紹介していきます。

iTiなりに物語図を作ってみた

 さっそくですが、完成図がこちらとなります。

 唐突にこれを見せられても、よくわからないと思います。この図には、僕の主観が多分に入っていますしね。
 なので今回は、ウォシャウスキー兄弟(姉妹)が監督するSF映画『マトリックス』になぞらえて、それぞれの役割を一つずつ説明していきましょう。

 今作は映画史に残る名作なので、ぜひとも視聴を勧めたいところですが、ショッキングなシーンもかなり多いのでご注意を。未視聴かつネタバレがダメな方は、この時点で記事を閉じてください。

序盤【世界に疑いを持つ】

 本作は『明らかに物理法則のおかしい世界と、世界に疑念を抱いている青年(主人公のネオ)を映すこと』から始まります。(テーゼ)

 序盤はパソコンがハッキングされて謎のメッセージを受け取ったり、上司に叱られたり、尋問されたりさんざんな目に遭うネオですが、その描写によってネオの意志を視聴者に見せることでテーゼを提示します。

 序盤から中盤に差し掛かるあたりで、ネオの疑問の答えを知る人物モーフィアスに出会い、真実を知るか否かの選択を迫られます。
 ここでネオが真実を知る選択をしたことで、物語は中盤に入ります。(この『中盤に入るために必要なポイント』を、脚本の用語では『ターニング・ポイント1』と呼ぶことがありますが、今回は省略します)

中盤前半【現実を受け入れられない】

 中盤はモーフィアスの導きで、ネオが『自分の住んでいた世界が現実ではなく、本当の現実はもっとひどいものだった(アンチテーゼ)』と知ることから始まります。

 この時点でネオは一度、本当の現実を拒絶します。しかしなんとか折り合いをつけると、モーフィアスの『ネオは救世主となる存在だ』という期待に応えるために、戦闘訓練を受けはじめます。

 この記事では、話の転換点に入るまでを中盤前半と呼称することにしましょう。中盤前半の役割は『アンチテーゼを提示すること』と、この図では定義しています。

 またこの時点では、テーゼとアンチテーゼをすり合わせはじめた段階であり、まだ話の風呂敷を自然に広げられます。(『風呂敷を広げるのは前半まで』が鉄則)

 映画において一番おいしい部分がこの中盤前半です。コマーシャルなどでよく流れるシーンも中盤前半に集中していることが多いです。本筋と離れたことを書いても許される部分でもあり、一番楽しい部分とも言えます。

 十分に風呂敷を広げたあとに話の転換点となる出来事が起こり、中盤の後半に差し掛かります。

中盤後半【「僕は違う」】

 中盤の後半は『モーフィアスの信頼する預言者のもとへ赴く』ことから始まります。

 今作において話の転換点の役割は、前記事の『花のき村と盗人たち』とは異なります。
 明確に話の流れを変えるものというより、中盤前半でズレた話の方向を修正する意味合いが大きいです。
 興行においては、視聴者の期待に応えるために中盤前半で話の流れを変えることが多いためか、このような手法を取ることが珍しくありません。

 この時点で、水面下で裏切り者の暗躍が始まっており、このあとに起こるピンチの伏線となっています。
 預言者のもとにたどり着いたネオは、自分自身が救世主であることに半信半疑であったことから、つい「僕は違う」と聞き、預言者にも同意されてしまいます。

 自分が救世主ではなかったと落ち込み、仲間に打ち明けられないネオ。
 そこに裏切り者と敵役が動き出したことで、モーフィアスはさらわれ、仲間たちも次々と命を落とします。
 受け入れたくない本当の現実にも打ちのめされたあげく、マトリックスに対抗できない絶望的な状況に陥ったネオ。
 さらわれたモーフィアスは重要な情報を持っており、仲間たちは情報が漏洩する前にモーフィアスの命を奪う判断を下します。

 そこでネオは、モーフィアスを救いたい一心でその判断を覆し、仲間に「自分は救世主ではなかった」と打ち明けます。その上で「それでも、今の僕なら助けられると思う」と話し、モーフィアスのいる仮想現実マトリックスに入っていきます。

終盤【マトリックスを真に理解したネオ】

 終盤はネオが『僕ならモーフィアスを助けられる』と信じたことで始まります。

 終盤の役割は『変化の提示』ですが、すでにこの時点で主人公ネオの変化は提示されています。
 自分を救世主と信じられなかったネオが、救世主とは関係なく『モーフィアスを助けられる』と信じたことで、序盤の『一般人としてのネオ』でも、中盤の『他人から言われたからやっているだけのネオ』でもない、自分の意志で仲間を救う『救世主』としてのネオに覚醒しています。

 この時点でネオは『マトリックスでは自分が信じたことが現実になる』ということを理解しはじめ、実際にマトリックス内で無双します。
 モーフィアスを救い出したネオは、ラストの敵役との一騎打ちの末に、ついにマトリックスの形を真に理解します。

 マトリックス内の事象を操ることができるようになったネオは、精神的にも実力的にも本当に救世主となりました。

おわりに

 今回は自前の図を使ったので、わかりづらいところも多くあると思います。
 それでも三幕構成だけの図と比べ、細部まで表現できるようになったことがわかると思います。

 僕の作った、いわば『iTi式の物語図』は僕が使う分には問題は起こりづらいです。しかし脳内補完に頼っている部分も多く、他の方がそのまま使える図ではないと思っています。

 しかし脳内に有るものを図のように可視化するというのはとても有効な手です。
 読者の皆さんも、ご自身に合ったスタイルを、自分用に可視化してみるのはいかがでしょうか?

 ではこれで『自分なりに物語の図を作り、視覚化する』お話は以上となります。
 最後の一行まで読んでいただきありがとうございます。

 今回の記事でも取り扱った『弁証法』と『三幕構成』の記事は、青文字をクリックしてお読みください。

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