なろう系小説小話『大陸を作ったら距離計算をミスった件』~俺の脚力がおかしいって、弱すぎるって意味だよな?~

 むかしの人々は一日30kmなら問題なく歩けたんですって。
 日が昇って落ちるまでの約8時間を歩きつづけた場合の話です。
 みなさんはこれを聞いて『そんなに歩けないよ』とおもったでしょうか?
 それとも『もっと歩けるよ』とおもったでしょうか?

 僕はそれまで、他人の歩ける距離を気に留めたことがありませんでした。
 そのせいかはわかりませんが、自分の作ったキャラクターの歩ける距離にも無頓着になっており、設定の矛盾を起こして困ったことがあります。
 それは「歩き旅をするお話」を書いたときです。

車がないなら歩けばいいじゃない

 僕がそのお話の設定を用意するにあたって、交通機関が未発達である架空の世界をかんがえました。
 サスペンション(悪路の衝撃から乗り物を守る機構)が取り付けられていない劣悪な駅馬車ならギリギリ普及しているかなという感じで書きました。
 それだけなら、なにも問題はありませんでした。

 次に僕は『この世界でも現実に即した四季、特に冬を描写したい』とかんがえました。

雪が見たいなら1400km歩けばいいじゃない

 出発地点が南側の想定でしたので、冬を描写するにあたって山口県から青森県までの距離、約1400kmを参考にして、その距離を歩くことにしました。
 かなり距離が長めですが、『歩き旅で四季を表現する』点においてはまだなにも問題はありませんでした。

 次に作中の目的地までのタイムリミットをかんがえました。そのときは『だいたい1か月でええか』とおもい、そのまま一気に書きすすめてしまいました。
 ここまでならなにも問題は……ありました。はい、これこそが破綻のはじまりでした。

 物語である以上、一か月間ずっと同じペースで歩きつづけるほうが不自然なのです。とうぜん作中では様々なイベントが発生します。

 発生したイベントに道を阻まれたり村や町に滞在したりなどを考慮し、計算してみるとじっさいに歩いているのは1週間強。一日8時間歩くとかんがえて、だいたい56時間。

 この時点で、もうおわかりの方もいるかと思います。
 冒頭でお話した通り、交通機関が十全でないゆえに旅慣れたむかしの人々の脚力であっても一日30km。
 しかしこの計算では登場人物は一日200km歩かなければ、いえ、走らなければなりません。

一週間で日本横断したいなら時速25kmで毎日8時間、悪路もかまわず走り続ければいいじゃない

 初期案の時点で登場人物の身体能力は、現代水準の一般人レベルです。
 200km走りきる人間が尋常のはずがありません。(余談ですが、現代の配達屋さんにあたる『飛脚』は荷物を持ったまま、24時間で200km走りきったといいます。おそるべし)

 言うまでもなく、その設定には手直しが必要でした。
 そのときは以下のように設定を変更して、ようやく望む形に落ち着けました。

【僕の出した改善案】

  • 目的地までの距離を三分の一にする
  • 旅程を二倍にのばす
  • 一度だけワープ的な事象を発生させることを許す
  • 旅人が休息するための町が30kmの等間隔で建てられていることにする
  • じっさいの気候よりも、四季を見れる条件をゆるめる。

飛脚はもういないじゃない(おわりに)

 以上が僕の失敗談となります。
 このような致命的なミスは往々にして、物事に関心を向けられなくなったときに起こるものだと僕は思っています。
 じっさいにこのミスを起こしたのは、小説の設定をはじめて手掛けることになり、精神的な余裕がなかったことが大きいと自己分析します。
 調子に乗ってもいいです。細かなミスはしてもいいです。創作をするときは『死ななきゃ安い』の精神で、余裕を持ちましょう。

 僕の失敗談が皆さんの糧になればいいなぁ、と下心を込めて今回の記事を締めさせていただきます。

 ちなみに僕は(半分は今回の件に対する反省も込みで)横手駅と大曲駅を往復しようとしたことがありますが、10km歩けませんでした。

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